『べらぼう』に登場する和歌
2025年の大河ドラマ『べらぼう』の第14回では、遊郭の主人たちが百人一首をパロディにした和歌を詠み合う場面がありました。江戸時代には、各地に寺子屋という学びの場があり、読み書きや計算などが教えられていました。その中で、百人一首は教材として使われていたため、当時の人々にとって百人一首はとても身近な存在だったようです。
りつ(安達祐実さん)の和歌
原文
店の場所 うつらんとてか 家田屋に
わが身世にふる ながめ狭しに
りつ(安達祐実さん)
現代語訳
店を家田のとこに移すのかい!?
もう狭くなっちゃったもんねぇ
原文
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身よにふる ながめせしまに 百人一首 9番歌 小野小町
現代語訳
美しかった桜が長雨に打たれて空しく色あせてしまった。私の容色も物思いに沈んで、この世を過ごしているうちに衰えてしまった。
重三郎(横浜流星さん)の和歌
原文
嘆けとて 茶屋か本屋か 惑わする
かこち顔なる わが馴染みかな
蔦屋重三郎(横浜流星さん)
現代語訳
茶屋か本屋かわかんないって
客も困ってんすよ
原文
嘆けとて 月やは物を 思はする
かこち顔なる わが涙かな 百人一首 86番歌 西行法師
現代語訳
嘆けと言って月が私に物思いをさせるのだろうか。そうではない。月に誘われるそぶりで流れる私の涙かな。
丁子屋長十郎(島英臣さん)の和歌
原文
金の痛み 浅草紙の 己の身
破けてものを 思うことかも
丁子屋長十郎(島英臣さん)
現代語訳
金はどうすんだい!?
破綻してからじゃ遅いんだぜ!
原文
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけて物を 思ふころかな 百人一首 48番歌 源重之
現代語訳
風が激しく吹くので、岩に打ち寄せる波がひとりでに砕け散るように、私だけ心を砕かれて、物思いをするこの頃ですよ。
蔦屋重三郎(横浜流星さん)の和歌
原文
富本本 我が名はまだき 立ちにけり
稽古本もと 思ひそめしか
蔦屋重三郎(横浜流星さん)
現代語訳
富本本で名が売れたので、次は稽古本をと考えてます!
原文
恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり
人しれずこそ 思ひそめしか 百人一首 41番歌 壬生忠見
現代語訳
恋をしているという噂が早くも立ってしまった。気づかれないように心の中で密かに想い始めたばかりなのに。
扇屋宇右衛門(山路和弘さん)の和歌
原文
ならばよし ならば後押し 憂ひなく
吉原ゆゑに もの思ふ身は 扇屋宇右衛門(山路和弘さん)
現代語訳
ならいいんじゃないかい?
吉原のためにも後押ししてやるよ
原文
人もをし 人もうらめし あぢきなく
世を思ふゆゑに 物思ふ身は 百人一首 99番歌 後鳥羽院
現代語訳
時には人が愛しく、時には人が恨めしく思われる。つまらなく世の中を思うがゆえに物思いに沈む私には。