時雨の百人一首

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日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー

Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox

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源重之みなもとのしげゆき

かぜをいたみ
いわうつなみ
おのれのみ
くだけてもの
おもころかな

源重之
源重之

THE waves that dash against the rocks Are broken by the wind And turned to spray; my loving heart Is broken too, I find, Since thou art so unkind.Shige-yuki Minamoto

48番歌
かぜをいたみ いわうつなみの おのれのみ
くだけてものおもころかな
作者:源重之みなもとのしげゆき(生没年不詳)
出典:詞花和歌集
現代語訳
風が激しく吹くので、岩に打ち寄せる波がひとりでに砕け散るように、私だけ心を砕かれて、物思いをするこの頃ですよ。
解説
好意を寄せる人を岩に見立て、恋をする自分を岩に砕ける波に見立てています。どんなに想いを届けても相手にされない切なさを詠んでいます。
どんな人?
源重之は清和天皇のひ孫です。様々な地方官職を歴任しながら和歌を作りました。彼は皇太子時代の冷泉天皇に百首歌『重之百首』を献上しています。この百首歌は、現存するものとしては最も古いものといわれています。同じく百首歌を作っていた曽禰好忠とも親交がありました。また、藤原実方とも交流があり、陸奥国に赴任することになった実方に従って一緒に下向しています。
語句・豆知識
いた み
風が激しいので
うつ
岩を打つ波のように
おのれ のみ
私だけが
くだけ
くだけて
思ふ ころ かな
物思いをするこの頃ですよ
源重之の系図
源重之の相関図 陽成院 元良親王 源実朝

の番号が付いている人物をクリックすると、その歌人のページに移動します。

源重之は、源兼信の子でしたが、叔父の参議・源兼信の養子になっています。 清和天皇の曽孫ですが、官位には恵まれず、地方官を歴任。最終官位は、筑前権守・従五位下でした。

安法法師が河原院で催す歌会に参加し、恵慶法師と親しかったようです。

源重之は、百首歌を含む家集『重之集』を作り、東宮時代の冷泉天皇に献上しています。私的ではあるものの、先駆けて百首歌を作っていた曽禰好忠の影響を受け、親交がありました。

晩年は、藤原実方が陸奥守として赴任する際、一緒に陸奥国に赴き、当地で亡くなりました。

涙を拭う袖を詠んだ歌
次の歌は、源重之が詠んだ歌で、『後拾遺和歌集』に収められています。
後に、殷富門院大輔がこの歌をもとにして新たな歌を詠み、その歌が百人一首に選ばれました。

原文

松島まつしま雄島おじまいそあさりせし
海人あまそでこそ かくはれしか 『後拾遺和歌集』源重之

現代語訳

松島の雄島の磯で漁をしている海女の袖だったら、涙で濡れた私の袖ほどに濡れているでしょうか。

歌川国芳の『百人一首之内』
歌川国芳による源重之の浮世絵
British Museum, Public domain, via Wikimedia Commons

江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。
百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。

三十六歌仙
源重之は三十六歌仙の1人。
三十六歌仙の一覧ページはこちらをご覧ください。

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