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Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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俊恵法師
夜もすがら
物思ふころは
明けやらで
閨のひまさへ
つれなかりけり
ねやのひま
さへつれな
かりけり
よも
- 85番歌
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夜もすがら
物思ふころは
明けやらで
閨のひまさへ つれなかりけり
作者:俊恵法師(1113年~没年不詳)
出典:千載和歌集 恋
- 現代語訳
- 一晩中、恋に思い悩んでいるこの頃は、いつまでも夜が明けきらないので、一向に光が差し込まない寝室の隙間さえもつれなく感じられる。
- 解説
- 『千載和歌集』の詞書に「恋の歌とて詠める」とあり、この歌は題詠です。俊恵法師は、一向に明けることのない暗闇の中で、薄情な恋人のことを思い懊悩しながら待ちくたびれる女性の立場でこの歌を詠みました。
- どんな人?
- 俊恵法師は、17歳で父と死別し、大仏があることで有名な東大寺の僧になりました。後に京都の白川に移り住み、歌林苑と称した僧坊に多くの歌人たちを招き、多くの歌会を催しました。百人一首の作者も多く参加しています。弟子には『方丈記』の作者・鴨長明がいます。彼は『無名抄』で師匠・俊恵法師の教えを多く書き記しています。
- 語句・豆知識
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- 夜もすがら
- 一晩中
- 物思ふ ころ は
- 物思いをする頃は
- 明けやら で
- 明けきらないで
- 閨 の ひま さへ
- 寝室の隙間までも
- つれなかり けり
- つれないものだなあ
- 俊恵法師の系図
-
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- 歌林苑に参加した歌人たち
- 俊恵法師は、自房の歌林苑で毎月歌会を催し、多くの歌人が参加しました。
- 喜多川歌麿の浮世絵
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©Museum of Fine Arts, Boston この作品は、江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿によるものです。タイトルは『歌撰戀之部 物思戀』で、当時人気を博した百人一首の俊恵法師の歌に着想を得て制作されたと考えられています。
描かれた女性は眉を剃り落としており、既婚者であることがわかります。「大首絵」と呼ばれる当時先駆けとなった上半身をアップにした構図で、物思いにふける人妻の表情が際立ち、センセーショナルな印象を与えたようです。
さらに「夜もすがら…」の歌を想起させることから、この作品は人々の関心を集めました。喜多川歌麿の版元になっていた蔦屋重三郎の企画が功を奏したとも言われています。
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