時雨の百人一首

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日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー

Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox

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殷富門院大輔いんぷもんいんのたいふ

せばやな
雄島おじまのあまの
そでだにも
ぬれにぞぬれし
いろはからず

殷富門院大輔
殷富門院大輔

THE fisher's clothes, though cheap, withstand The drenching they receive; But see I my floods of tears have blurred The colours of my sleeve, As for thy love I grieve.The Chief Vice-Official in Attendance
on the Dowager Empress Impu

90番歌
せばやな 雄島おじまのあまの そでだにも
ぬれにぞぬれし いろはからず
作者:殷富門院大輔いんぷもんいんのたいふ(生没年不詳)
出典:千載集 恋
現代語訳
あなたに見せたい。私の血の涙に濡れて色が変わってしまったこの袖を。あの雄島の漁師の袖でさえ、ひどく濡れても色は変わらないのに。
解説
千載和歌集』の詞書に「歌合しはべりける時、恋の歌とて詠める」とあり、この歌は題詠です。当時の和歌では、感情が極まると「血の涙が流れる」という慣例的な表現がありました。この歌では「血の涙」とは直接書かれていないものの、「袖の色」と詠むことで、当時の人々は「血の涙で濡れた袖」を暗黙の了解として理解していたようです。
どんな人?
殷富門院大輔は、後白河天皇の皇女で、式子内親王の姉である殷富門院に仕えました。多くの歌を詠んだことから「千首大輔」と呼ばれました。
語句・豆知識
見せ ばや
見せたいなあ。
雄島
雄島の
あま だに
漁師の袖でさえ
ぬれ ぬれ
濡れに濡れた
かはら
色は変わらないのに
殷富門院大輔の相関図
殷富門院大輔の系図 崇徳院 式子内親王 後鳥羽院

殷富門院大輔は、後白河天皇の皇女で、式子内親王の姉である殷富門院亮子に仕えた女房です。

俊恵法師が主催する歌林苑に参加し、二条院讃岐や小侍従こじじゅうらと交流があったようです。

血の涙
和歌では「紅涙こうるい」または「くれなゐの涙」と詠まれます。
本歌
殷富門院大輔の百人一首の歌は、次の歌から本歌取りされました。
この歌は源重之が詠んだもので『後拾遺和歌集』に収められています。

原文

松島まつしま雄島おじまいそあさりせし
海人あまそでこそ かくはれしか

現代語訳

松島の雄島の磯で漁をしている海女の袖だったら、涙で濡れた私の袖ほどに濡れているでしょうか。

ミセバヤ
ミセバヤ

日本古来より万葉の植物として親しまれている多年草。
美しい花を「誰にみせようか」という意味が
名前の由来で「玉の緒」という別名もあります。

歌川国芳の『百人一首之内』
歌川国芳による浮世絵
British Museum, Public domain, via Wikimedia Commons

江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。
百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。

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