時雨の百人一首

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日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー

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音声

藤原清輔朝臣ふじわらのきよすけあそん

なが
またこのごろや
しのばれ
しと
いまこいしき

藤原清輔朝臣
藤原清輔朝臣

TIME was when I despised my youth, As boyhood only can; What would I give for boyhood now, When finishing life's span An old decrepid man!The Minister Kiyo-suke Fujiwara

84番歌
ながば またこのごろや しのばれ
しといまこい しき
作者:藤原清輔朝臣ふじわらのきよすけあそん(1104年~1177年)
出典:新古今和歌集
現代語訳
長く生きながらえたら、今を懐かしく思うだろう。つらいと思った日々も今では懐かしく思えるのだから。
解説
『清輔集』の詞書に「三条内大臣いまだ中将にておはしける時、遣はしける」と記されています。三条内大臣とは、藤原公教のことだと言われています。一説には、この歌は、長く中将に留まり、不遇だった公教を清輔が励ますために詠んだ歌だと言われています。
どんな人?
藤原清輔は『詞花和歌集』の撰者である左京大夫顕輔の子です。ただし、父親と確執があったため『詞花和歌集』には、清輔の歌が一首も採用されていません。後に清輔は、二条天皇の命を受け『続詞花和歌集>』を編纂する名誉を得ますが、奏上直前に二条天皇が崩御したため、残念ながら日の目を見ることはありませんでした。
枕詞なし掛詞縁語なし序詞なし本歌取りなし歌枕なし
枕詞
枕詞とは、特定の語句を導き出すための5文字の言葉です。導き出す語句の直前に置かれ、語調を整えたり、ある種の情緒を添えます。

この歌には枕詞はありません。

掛詞
掛詞とは、同音異義語の語句(景物と心情)を重ねて用いることで、言葉の連想により世界を広げる技法です。

この歌に掛詞はありません。

縁語
縁語とは意味的に関連の深い語句を用いることで、言葉の連想により、味わい深いものにする技法です。

この歌には縁語はありません。

序詞
序詞とは、言いたい言葉を導き出すために前置きされる言葉のことです。序詞は歌人が独自に作成し、7文字以上で構成されます。比喩によるもの、掛詞にかかるもの、同音を繰り返すものの3種類があります。

この歌には序詞はありません。

本歌取り
本歌取りとは、古歌の一部を借用することで、古歌の心情や趣向を取り込む技法のことです。本歌は左記のとおりです。

この歌は本歌取りしていません。

歌枕
歌枕とは、和歌に登場する景勝地のことです。

この歌に歌枕はありません。

語句・豆知識
長らへ
生き長らえたら
また このごろ しのば
今頃のことを懐かしく思うのだろうか
係助詞「や」を受けて、文末は連体形になっています。
憂し 恋しき
つらいと思った人生も今は恋しい
係助詞「ぞ」を受けて、文末は連体形になっています。
藤原清輔の系図
藤原清輔の系図 藤原顕輔

の番号が付いている人物をクリックすると、その歌人のページに移動します。

藤原清輔は、藤原顕季あきすえを祖とする六条藤家ろくじょうとうけ と呼ばれる歌道の家系に生まれ3代目です。ちなみに「六条藤家」の名前は、藤原顕季が京都六条烏丸に住んでいたことに由来します。

藤原顕輔あきすけ (左京大夫顕輔)は、藤原清輔の父ですが、父とは折り合いが悪く、顕輔が撰者を担当した『詞花集』には、清輔の歌が一首も入っていません。このため、親子関係に確執があったとされています。しかし、顕輔が亡くなる年に、清輔は、六条藤家の嫡流の証とされる人麻呂影供で使われる人麻呂の肖像を顕輔から譲られました。

平安末期は、保守的な歌を重んじる六条藤家と革新的な和歌を推進する御子左家みこひだりけ が歌壇の主導権を競い合いました。六条藤家は、顕輔・清輔親子の時代に全盛を迎えましたが、その後は次第に衰退しました。一方で、御子左家は、有力な歌人を輩出し続け、歌壇に長く君臨しました。

清輔の百人一首の歌は、清輔の従兄弟である藤原公教に贈られたものです。

袋草紙
『袋草紙』は藤原清輔が著した歌学書です。歌会の作法や歌を作るうえでの心得、有名歌人の逸話などが記されています。
奥義抄
『奥義抄』は藤原清輔が著した3巻からなる歌学書です。和歌の効用や沿革、『万葉集』から『後拾遺和歌集』までの約260首の注釈、「六義りくぎ」と呼ばれる和歌の六種類の表現様式、本歌取、枕詞、歌語などについて記されています。

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