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Translated by WILLIAM N. PORTER
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謙徳公
あはれとも
いふべき人は
思ほえで
身のいたづらに
なりぬべきかな
みのいたつ
らになりぬ
へきかな
あわれ
- 45番歌
-
あはれとも
いふべき人は
思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
作者:謙徳公(924年~972年)
出典:拾遺和歌集 恋
- 現代語訳
- 私に同情してくれそうな人は思い浮かばない。あなたに捨てられて私はむなしく死んでいくのでしょう。
- 解説
- この歌は、拾遺和歌集の詞書によると、失恋の痛みを詠んだものです。栄華を極めたと知られる作者が、このように打ちひしがれた心情を吐露し、せめて憐れんでほしいと懇願する姿は、どれほど力がある人物でも恋の行方は思いどおりにならないことを浮き彫りにしているかのようです。
- 語句・豆知識
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- あはれ と も
- ああ、お気の毒にと
- 言ふ べき 人 は
- 言ってくれる人は
- 思ほえ で
- 思いあたらず
- 身 の いたづらに なり ぬ べき かな
- 死んでしまうに違いないのだなあ
- 藤原敦忠の系図
-
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謙徳公は、右大臣・藤原師輔の長男で、摂政・関白・太政大臣を務めた貞信公の孫にあたります。
謙徳公の娘である藤原懐子は、冷泉天皇の女御となり、花山天皇を産みました。また、謙徳公の五男・藤原義懐は、花山天皇の外祖父として、一時期権勢を振るいました。
謙徳公の三男・藤原義孝も百人一首に選ばれています。また、義孝の子は、三蹟の一人である能書家の藤原行成です。
- 和歌所の別当
- 藤原伊尹は、村上天皇の命により後撰和歌集を編纂する和歌所の別当に任ぜられました。このときの和歌所が梨壺にあったため、後撰和歌集の撰者(清原元輔、大中臣能宣、源順、坂上望城、時文)は梨壺の五人と呼ばれています。
- 一条摂政御集
- 藤原伊尹の家集。伊尹が大蔵史生倉橋豊蔭という卑官に仮託して、自身の恋愛を歌物語風にまとめています。百人一首に採られた「あはれとも…」の歌は本歌集の冒頭に収められています。
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