日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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大中臣能宣朝臣
御垣守
衛士のたく火の
夜はもえ
昼は消えつつ
物をこそ思へ
MY constancy to her I love I never will forsake; As surely as the Palace Guards Each night their watch-fire make And guard it till daybreak.The Minister Yoshi-nobu, of Priestly Rank
- 49番歌
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御垣守
衛士のたく火の
夜はもえ
昼は消えつつ 物をこそ思へ
作者:大中臣能宣朝臣(921年~991年)
出典:詞花和歌集 恋
- 現代語訳
- 警護の兵士が燃やす篝火が、夜は燃えて昼は消えているように、私の恋心は夜に燃え、昼は消え入るように沈んでは物思いにふけっています。
- 解説
- 御垣守は皇居の門を警護する役のことで、この歌では衛士(警護の兵士)にかかる枕詞として使われています。門前の篝火 を恋の炎に見立て、篝火が消える日中に逢えない切なさを歌に詠み込んでいます。
- どんな人?
- 大中臣能宣は、中臣鎌足と同じ祖先を持つ、中臣氏の出身です。中臣氏はもともと神祇を司る一族であり、彼も神祇官の家柄に生まれ、自身も伊勢神宮の祭主をつとめました。歌人の多い家柄で、伊勢大輔は彼の孫にあたります。村上天皇の命により『後撰和歌集』の編纂を行った「梨壺の五人」の一人です。
- 語句・豆知識
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- 御垣守
- 皇居の門を警護する兵士の
- 衛士 の たく 火 の
- 衛士のたく火が
- 夜 は もえ 昼 は 消え つつ
- 篝火が夜は燃え、昼はきえつつ
- 物 を こそ 思へ
- 物思いに沈んでいる
- 大中臣能宣の系図
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大中臣氏の先祖を遡っていくと、平安時代に栄華を誇った藤原氏と同じ先祖に行き着きます。
中臣家は神事や祭祀を司る一族で、歌人を多く輩出しています。頼基、能宣、輔親、伊勢大輔は歌人としてよく知られています。
- 言祝ぎの歌
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平安時代には、年が明けた子の日に行われる「小松引
き」という宮廷儀式がありました。この儀式は、千年の命を持つ松の生命力を小松を引いた人が引き継ぎ、長寿を願うというものです。この歌は、宇多天皇の皇子である敦実親王が小松を引いた際に、大中臣能宣が献じた言祝
ぎの一首です。能宣がこの歌を父親の頼基に披露すると、頼基は「(そんな立派な歌を詠んでしまったら)もし帝が主催する子の日に招かれたら、どんな歌を詠むつもりだ」と叱ったという逸話が残されています。「小松引
き」は「子の日遊び」とも呼ばれます。
原文
千年まで かぎれる松も けふよりは
君がひかれて 万代や経む 『拾遺和歌集』大中臣能宣現代語訳
千年までと寿命が限られる松も
今日からはあなたに引かれて万年の命を保つでしょう。 - 葛飾北斎の『百人一首姥かゑとき』
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江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎による作品『百人一首姥かゑとき』です。百人一首の歌を乳母がわかりやすく絵で説明するという趣旨で制作されたものです。御垣守の衛士たちは休憩中のようです。左奥に佇む貴族は能宣だと思われます。燻る煙のように昼間逢えない恋人に想いを寄せているのでしょうか。
- 歌川国芳の『百人一首之内』
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江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。
百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。 - 三十六歌仙
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大中臣能宣は三十六歌仙の1人。
三十六歌仙の一覧ページはこちらをご覧ください。
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