日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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中納言朝忠
逢ふことの
絶えてしなくは
なかなかに
人をも身をも
恨みざらまし

TO fall in love with womankind Is my unlucky fate; If only it were otherwise, I might appreciate Some men, whom now I hate.The Imperial Adviser Asa-tada
- 44番歌
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逢ふことの
絶えてしなくは
なかなかに
人をも身をも 恨みざらまし
作者:中納言朝忠(910年~966年)
出典:拾遺和歌集 恋
- 現代語訳
- 男女が逢うことが全くなかったら、人のつれなさを恨んだり、自分の惨めさを嘆くこともなかったのに。
- 解説
- この歌は天徳内裏歌合で詠まれたものです。「未逢恋」(まだ会ったことのない恋)と解釈される場合や、「逢不逢恋」(会っても会わない恋)と解釈される場合があります。後者の解釈では、一度は恋が叶い幸せを感じたものの、その後、相手の女性に冷たくされ、「いっそ会わなければよかった」と後悔する気持ちと、それでも相手を忘れられず、逢瀬の思い出に心を引きずられるもどかしさが詠まれていると考えられます。
- どんな人?
- 中納言朝忠こと藤原朝忠は、三条右大臣定方の五男として生まれ、官位は従三位中納言まで昇進しました。和歌だけでなく、笙の名手としても知られていました。ところで、朝忠の娘は穆子で、孫娘は藤原道長の妻になる倫子です。
- 語句・豆知識
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- 逢ふ こと の
- 男女の出会いが
- たえて し なく は
- まったくなければ
- なかなかに
- かえって
- 人 を も 身 を も
- 相手も自分自身も
- 恨み ざら まし
- 恨むことはないでしょうに
- 三条右大臣の系図
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■の番号が付いている人物をクリックすると、その歌人のページに移動します。
藤原朝忠は、三条右大臣(藤原定方)の五男です。孫には藤原道長の正妻になった倫子がいます。三十六歌仙の一人で、笙の名手でした。
朝忠の百人一首の歌は、平兼盛(40番歌)、壬生忠見(41番歌)の歌が詠まれたのと同じ歌合「天徳内裏歌合」の席で詠まれました。
- 笙(しょう)
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Metropolitan Museum of Art, Public domain 雅楽用の管楽器。十七本の細い竹の管が円状に配置されており、立てて吹きます。
写真は19世紀に作られた笙の写真のため、平安時代の笙とは多少異なるかもしれません。
朝忠は笙の名手でした。再生ボタンをクリックすると、笙の音声が流れます。
ポケットサウンド/効果音素材 - 歌川国芳の『百人一首之内』
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British Museum, Public domain, via Wikimedia Commons 江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。
百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。
お歯黒を塗っている様子が描かれています。
国芳の制作意図が気になるところです。 - 三十六歌仙
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藤原朝忠は三十六歌仙の1人。
三十六歌仙の一覧ページはこちらをご覧ください。
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