日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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紀友則
久方の
光のどけき
春の日に
しづ心なく
花の散るらむ
THE spring has come, and once again The sun shines in the sky; So gently smile the heavens, that It almost makes me cry, When blossoms droop and die.Tomonori Kino
- 33番歌
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久方の
光のどけき
春の日に
しづ心なく 花の散るらむ
作者:紀友則(生年不詳~904年頃)
出典:古今和歌集 春
- 現代語訳
- うららかな春の日に桜の花はどうしてせわしなく散ってしまうのでしょう。
- 解説
- 『紀友則集』の詞書に「寛平の御時后の宮の歌合」とあり、この歌はおそらく「落花」を題に詠まれたと考えられています。桜の花が風もない穏やかな春の日にに散ってしまう様子からまるで静心(穏やかな心)を持たず、慌ただしく散ってしまうようだと桜を擬人化させて、歌を詠んでいます。
- どんな人?
- 紀友則は『土佐日記』や『古今和歌集』の仮名序を書いた紀貫之の従兄弟です。紀友則も『古今集』の撰者の一人でしたが、完成前に亡くなってしまいました。その歌の才能は高く評価され、多くの作品が勅撰和歌集に収録されており、三十六歌仙にも選ばれています。
- 語句・豆知識
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- 久方の
- 久方の
- 光 のどけき
- 日の光が穏やかである
- 春 の 日 に
- 春の日に
- しず心 なく
- 落ち着いた心がなく
- 花 の 散る らむ
- どうして桜の花は散るのだろう
- 紀友則の系図
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紀友則は紀貫之の従兄弟です。
醍醐天皇の勅を受けて、紀友則・紀貫之・壬生忠岑・凡河内躬恒は『古今和歌集』の撰者を務めましたが、紀友則は『古今和歌集』を編纂している途中で亡くなりました。 - 梅花を詠んだ歌
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紀友則は百人一首の桜の歌で有名ですが、梅の歌も収められています。
『古今和歌集』の詞書には「梅の花を折りて人に贈りける」と記されています。原文
君ならで 誰に見せむ 梅の花
色をも香をも 知る人ぞ知る 『古今和歌集』紀友則現代語訳
あなた以外に誰に見せましょう。この梅の花を。
色も香りも本当の良さがわかるのはあなただけです。 - 秋の訪れを詠んだ歌
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この歌は、次の中国の故事を踏まえて紀友則が詠んだものです。蘇武という漢の使者が、長く匈奴
に囚われていました。匈奴は蘇武は死んだと言い張っていましたが、蘇武が雁の足に手紙を結びつけて飛ばしたところ、その雁が手紙を都に届けてくれたことで、無事に帰ることができました。
原文
秋風に 初雁が音ぞ 聞こゆなる
誰がたまづさを かけて来つらむ 『古今和歌集』紀友則現代語訳
秋風にのって初雁の鳴き声が聞こえてくる。
誰の消息を携えてやって来たのだろうか。 - 早世した紀友則を惜しむ
紀貫之の歌 -
紀友則は『古今和歌集』を編纂している途中で亡くなりました。従兄弟の紀貫之は、その早すぎる死を惜しみ、次の歌を詠みました。
原文
明日知らぬ 我が身と思へど
『古今和歌集』紀貫之
暮れぬ間の
今日は人こそ
かなしかりけれ現代語訳
明日さえわからない我が身だけれど、こうして生きている今日は、あの人のことが哀しくて仕方ありません。
- 歌川国芳の『百人一首之内』
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江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。
百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。 - 仮名序(かなじょ)
- 『古今和歌集』に添えられた仮名で書かれた方の序文のこと。詳しくは和歌ブームのきっかけ『古今和歌集 仮名序』をご覧ください。
- 三十六歌仙
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紀友則は三十六歌仙の1人。
三十六歌仙の一覧ページはこちらをご覧ください。 - 花文化の変遷
- 奈良時代までは梅が人気でしたが、平安時代からは桜の方が人気になりました。詳しくは『花文化の変遷』をご覧ください。
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