日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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藤原基俊
契りおきし
させもが露を
いのちにて
あはれ今年の
秋もいぬめり
IT is a promise unfulfilled, For which I humbly sue The dainty little mugwort plant Relies upon the dew, And I rely—on you.Mototoshi Fujiwara
- 75番歌
- 契りおきし させもが露を いのちにて
あはれ今年 の 秋もいぬめり
作者:藤原基俊(1060年~1142年)
出典:千載和歌集 雑
- 現代語訳
- 約束してくださった「さしも草の」の歌の露のようなありがたい言葉を命のように大切にしていたのに。ああ…今年の秋もむなしく過ぎていくようだ。
- 解説
- 『千載和歌集』の詞書によると、基俊は、興福寺で僧をしている息子・光覚が維摩会の講師になれるように藤原忠通に依頼しました。忠通は「標茅が原の」と歌の一説を引用し、承諾したかのような返事をしましたが、実際には光覚は講師に選ばれませんでした。基俊はそのことを残念に思い、この歌を詠みました。
- 語句・豆知識
-
- 契りおき し
- 約束してくださった
- させも が 露 を
- 「私を頼りにしなさい 標茅が原のさしも草のように」という、恵みの露のようなお言葉を
- 命 に て
- 頼りにして
- あはれ
- ああ
- 今年 の 秋 も いぬ めり
- 今年の秋も過ぎ去るようだ
- 藤原基俊の系図
-
藤原基俊は、藤原道長の曽孫ですが、道長の妾である源明子の子孫であるため、官職にはあまり恵まれませんでした。
基俊は、晩年に藤原俊成を弟子にしています。
- 「標茅が原」の歌
- 藤原忠通は、藤原基俊からの口利きの依頼に対して、次の歌から一説を引用して回答しました。
この言葉は、清水観音が詠んだとされています。原文
なほ頼め 標茅が原の さしも草
われ世の中に あらむ限りは 『新古今和歌集』清水観音現代語訳
私を頼りにしなさい 標茅が原のさしも草のように
胸を焦がすほど悩んでいたとしても
私がこの世にいるかぎりは。 - 維摩会(ゆいまえ)
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興福寺で毎年10月10日から7日間行われる維摩経を講ずる法会のことです。この講師に選ばれることは僧侶としての栄誉であり、講師を務めなければ、寺院の幹部への昇進が認められなかったといわれています。興福寺は藤原氏の氏寺で、法性寺入道前関白太政大臣こと藤原忠通は藤原氏の氏の長者でした。
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