日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
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皇太后宮大夫俊成
世の中よ
道こそなけれ
思ひ入る
山の奥にも
鹿ぞ鳴くなる
FROM pain and sorrow all around There 's no escape, I fear; To mountain wilds
should I retreat, There also I should hear The cry of hunted deer.Toshi-Nari, A Shinto
Official
in Attendance on the Empress Dowager
- 83番歌
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世の中よ
道こそなけれ
思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
作者:皇太后宮大夫俊成(1114年~1204年)
出典:千載和歌集 雑
- 現代語訳
- つらい世の中から逃れる方法はないようだ。思い詰めて分け入ったこの山の中でさえ、哀しげに鳴く鹿の声が聞こえてくる。
- 解説
- 俊成が27歳頃に詠んだこの歌は、平安時代の終焉が迫る時期でした。同世代の人々が出家するなどしている中、俊成もまた出家を考えて山に入ったのでしょう。しかし、山奥で雄鹿の悲しい鳴き声を聞き、悩みから逃れられる道はないと悟ったのだと考えられます。
- どんな人?
- 皇太后宮大夫俊成こと、藤原俊成は百人一首の撰者である藤原定家の父です。『千載和歌集』の撰者で、歌合の判者を多くつとめました。講評で「幽玄」、「艶」といった言葉を多く用い、和歌にとどまらず、茶道や能楽にも影響を与えました。
- 語句・豆知識
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- 世の中 よ
- 世の中よ
- 道 こそ なけれ
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(逃れる)道はない
係助詞「こそ」を受けて、文末は已然形になっています。 - 思ひ入る
- 「深く思う」と「山に入る」の掛詞
- 山 の 奥 にも
- 山の奥でもまた
- 鹿 ぞ 鳴く なる
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鹿が鳴いているようだ
係助詞「ぞ」を受けて、文末は連体形になっています。 - 「もののあはれ」を詠んだ歌
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この歌は、歌会で「恋」を題材として詠まれたものです。俊成は『源氏物語』を「もののあはれ」を体現する文学として高く評価し「源氏見ざる歌よみは遺恨のことなり」という言葉を残しています。この歌では、恋をすることで、喜びだけでなく、悲しみや苦しみを通じて人は心豊かになり「もののあはれ」つまり人生の儚さや切なさを深く理解することができると詠んでいます。
原文
恋せずは 人も心も なからまし
もののあはれも これよりぞ知る 『長秋詠藻』藤原俊成現代語訳
恋をしなかったら、人には心というものが育たないだろう。「もののあはれ」も恋をすることで理解できるのだ。
- 俊成の読み方
- 俊成は「としなり」と読まれたり、「しゅんぜい」と読まれたりします。
「しゅんぜい」と音読みする読み方は、「有職読み」といいます。 - 歌川国芳の『百人一首之内』
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江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。
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