日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
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権中納言定頼
朝ぼらけ
宇治の川霧
絶え絶えに
あらはれわたる
瀬々の網代木
SO thickly lies the morning mist, That I can scarcely see The fish-nets on the river bank, The River of Uji, Past daybreak though it be.The Assistant Imperial Adviser Sada-yori
- 64番歌
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朝ぼらけ
宇治の川霧
絶え絶えに
あらはれわたる 瀬々の網代木
作者:権中納言定頼(995年~1045年)
出典:千載和歌集 冬
- 現代語訳
- 夜がほんのり明けてくる頃、宇治川の朝霧が途切れ途切れになり、霧の絶え間のあちこちから現れわたる瀬々の網代木よ。
- 解説
- 『千載和歌集』には「宇治にまかりて侍りける時詠める」と書かれています。この歌は、定頼が宇治を訪れたときに詠まれました。冷えた川の表面から立ち上る霧に光が差し込み、霧の切れ目から見える網代木は、宇治川の冬の風物詩です。網代木とは、氷魚を取るために竹などを編んだざるを設置するための杭のことです。
- 語句・豆知識
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- 朝ぼらけ
- 夜がほのぼのと明け始め、物がほのかに見える頃
- 宇治 の 川霧
- 宇治川にかかる霧
- 絶え絶えに
- 途切れ途切れになって
- あらはれわたる
- 一面に現れる
- 瀬々 の 網代木
- あちこちの川瀬の網代木よ
- 藤原定頼の系図
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藤原定頼は、小野宮流の家系に生まれました。父は和歌、漢詩、管弦に優れ、「三舟の才」と称えられた藤原公任です。
- 柿本人麻呂が詠んだ宇治の網代木
- 次の歌は、柿本人麻呂が荒廃した近江国から藤原京に行く際に宇治の河辺で詠んだと伝わっています。
「もののふの」は「八十」を導く枕詞。「氏」と「宇治」が掛詞になっています。
廃都となった大津京を目の当たりにした柿本人麻呂が世の移り変わりの無常観を詠んだのではないかと考えられています。原文
もののふの 八十氏河の 網代木に
いさよふ波の 行く方知らずも 『万葉集』柿本人麻呂現代語訳
朝廷に仕える様々な役人たちは、宇治川の網代木にいざよう波のように行方はわからないことだ。
- 宇治川
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京都府宇治市から京都盆地へ流れ出す河川。地図へのリンク
- 歌川国芳の『百人一首之内』
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江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。
百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。
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