日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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文屋朝康
白露に
風の吹きしく
秋の野は
つらぬきとめぬ
玉ぞ散りける
THIS lovely morn the dewdrops flash Like diamonds on the grass— A blaze of sparkling jewels! But The autumn wind, alas! Scatters them as I pass.Asayasu Bunya
- 37番歌
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白露に
風の吹きしく
秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
作者:文屋朝康(生没年不詳)
出典:後撰和歌集 秋
- 現代語訳
- 白露に風がしきりに吹き付ける秋の野は、糸を通してつなぎ留めていない玉(真珠)が散っているようだ。
- 解説
- この歌は、秋の野原で風に吹き飛び散る露を真珠の玉に見立てています。日本は古くから真珠が産出されていますが、平安時代は、真珠のネックレスを身に着けることはあまりなかったようで、真珠の数珠のことを指しているのではと考えられます。露は空気中の水分が結露したもので、気温が冷え込む早朝の景色ではないかと考えられます。
- どんな人?
- 文屋朝康は六歌仙の一人である文屋康秀の息子です。父と同じく生涯にわたって官位に恵まれませんでしたが、歌人として有名で多くの歌会に出席していたようです。
- 語句・豆知識
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- 白露 に 風 の 吹きしく
- 白露に風がしきりにふきつけて
- 秋 の 野 は
- 秋の野原は
- つらぬきとめ ぬ
- 紐を通していない
- 玉 ぞ 散り ける
- 玉が散っているようだなあ
- 文屋朝康の系図
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文屋朝康は天武天皇の末裔でしたが、官位は、従六位下・大膳少進で、下級貴族でした。
文屋康秀は朝康の父です。百人一首に採られた康秀の歌は、古今和歌集の写本によっては朝康の歌となっている場合があり、百人一首では親子ペアで入選していますが、いずれも朝康の作品だとする説があります。
朝康の父・文屋康秀は三河掾に任官されたことがあり、そのときに小野小町に一緒に三河に来るように誘っており、その返事に小野小町は歌を詠んでいます。詳しくは小野小町のページをご参照ください。
- 白露を詠んだ歌
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百人一首の歌で文屋朝康は、野原に吹き散る白露を詠んでいますが、次の歌は、蜘蛛の糸にきらめく白露の和歌です。
白露は、その清らかさや儚さから、多くの歌人が好んで和歌に詠んでいます。原文
秋の野に 置く白露は 玉なれや
つらぬきかくる くもの糸すぢ 『古今和歌集』文屋朝康現代文訳
秋の野に降りた白露は真珠の玉だろうか。
蜘蛛の糸がつらぬき留めているよ。 - 葛飾北斎による浮世絵
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江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎による作品『百人一首姥かゑとき』です。百人一首の歌を乳母がわかりやすく絵で説明するという趣旨で制作されたものです。よく見ると蓮の上に露の玉が描かれています。蓮は露玉草 とも呼ばれます。
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