日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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清原深養父
夏の夜は
まだ宵ながら
あけぬるを
雲のいづこに
月やどるらむ
Too short the lovely summer night, Too soon ’tis passed away; I watched to see behind which cloud The moon would chance to stay, And here's the dawn of day!Fuka-yabu Kiyowara
- 36番歌
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夏の夜は
まだ宵ながら
あけぬるを
雲のいづこに 月やどるらむ
作者:清原深養父(生没年不詳)
出典:古今和歌集 夏
- 現代語訳
- 夏の夜というものは短く、まだ宵のうちだと思ってる間に夜が明けてしまった。月は雲のどのあたりに宿をとっているのだろう。
- 解説
- この歌には、短い夏の夜に沈む月を惜しむ気持ちが詠まれています。月がどの雲の向こうに身を隠しているのかと問いかける様子に、ファンタジーのような魅力が漂う、素敵な和歌です。
- どんな人?
- 清原深養父は天武天皇の末裔でしたが、生涯官位には恵まれませんでした。彼は清少納言の曽祖父ですが、清少納言も『枕草子』の中で「夏は夜。月のころはさらなり」と綴っており、夏の月に趣を感じている点が共通しています。藤原兼輔、紀貫之、凡河内躬恒とも交流がありました。
- 語句・豆知識
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- 夏 の 夜 は
- 夏の夜は
- まだ 宵 ながら
- まだ宵の口だと思っているうちに
- 明け ぬる を
- 夜が明けてしまったのだが
- 雲 の いづこ に
- 雲のどのあたりに
- 月 宿る らむ
- 月は宿をとっているのだろうか
- 清原深養父の系図
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清原氏には、天武天皇の皇子である舎人親王の子孫が多く含まれています。清原深養父の孫には清原元輔がいます。元輔の娘には清少納言がいます。
清原深養父は、中納言兼輔(藤原兼輔)・紀貫之・凡河内躬恒らと交流がありました。琴の名手である清原深養父が弾く琴の音を聞いて、藤原兼輔が詠んだ歌が『三十六人撰』に選ばれています。
- 降る雪を舞い散る花に見立てた歌
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次の歌は雪を見ながら間もなく訪れる春を待ち遠しく思う深養父の気持ちが詠まれています。
百人一首に採られた歌と同様にファンタージーあふれる一首です。原文
冬ながら 空より花の 散りくるは
雲のあなたは 春にやあるらむ 『古今和歌集』清原深養父現代語訳
冬なのに空から花が散ってくるのは、
今頃、雲の彼方は春なのだろうか。 - 死ぬほど恋しい歌
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次の歌は、再会を約束した恋人に長いこと逢えず、死ぬほど恋しい思いを訴えたものです。
原文
今ははや 恋ひ死なましを 逢ひ見むと
頼めしことぞ 命なりける 『古今和歌集』清原深養父現代語訳
今頃はとっくに恋焦がれて死んでいたはずだったけれども、あなたが「逢いましょう」と私を期待させた言葉だけが私を生き長らえさせているのです。
- 琴
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琴は奈良時代に中国から伝来した楽器で、左手で弦を抑え、右手で弦を弾いて音を出します。琴には、「琴」と呼ばれる7弦の琴、「和琴」と呼ばれる6弦の琴、「筝」と呼ばれる13弦の琴があります。
Metropolitan Museum of Art, Public domain - 葛飾北斎による浮世絵
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江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎による作品『百人一首姥かゑとき』です。百人一首の歌を乳母がわかりやすく絵で説明するという趣旨で制作されたものです。この絵では隅田川の屋台船が描かれています。江戸の人たちは屋台船で夏の夜を過ごすのが風流だったのでしょう。北斎も屋台船に乗って楽しい時間はあっという間に過ぎると感じたのでしょうか。
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