時雨の百人一首

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日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー

Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox

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藤原敏行朝臣ふじわらのとしゆきあそん

すみ
きしによるなみ
よるさ
ゆめのかよひ
人目ひとめよくら

藤原敏行朝臣
藤原敏行朝臣

TO-NIGHT on Sumi-no-ye beach The waves alone draw near; And, as we wander by the cliffs, No prying eyes shall peer, No one shall dream we're here.The Minister Toshi-yuki Fujiwara

18番歌
すみきしによるなみ よるさ
ゆめのかよひ 人目ひとめよくら
作者:藤原敏行朝臣ふじわらのとしゆきあそん(生年不詳~901年頃)
出典:古今和歌集
現代語訳
波は住之江の岸に打ち寄せるけれども、あなたは昼間だけでなく、そのうえ夜の夢の通い道さえ人目を避けて、現れてくれないのでしょうか。
解説
この歌は、恋人を待つ女性の立場で詠まれた歌で、せめて夢の中だけでも会いたいという内容です。中世の人々にとって夢は特別で、恋人が夢に出てこないのは、自分のことを想ってくれていないからだと考える人が多かったようです。
どんな人?
藤原敏行は歌人だけでなく書家としても有名な人物でした。人に頼まれて多くの法華経の書写をしていましたが、魚を食べたり、女性と関係を持ったり、不浄の身のまま書写したため、地獄に落ちてしまったという逸話が『宇治拾遺物語』に描かれています。
語句・豆知識
住の江
住の江の
よる
岸に寄せる波
よる さへ
昼だけでなく、そのうえ夜も
かよひ路
夢の中の恋人のところへ通う道
人目 よく らむ
人目を避けるのだろうか
藤原敏行の系図
藤原敏行の系図 紀貫之 紀友則

の番号が付いている人物をクリックすると、その歌人のページに移動します。

藤原敏行の祖先は藤原南家の藤原武智麻呂です。
母は紀氏で紀貫之や紀友則は遠い親戚です。

立秋の日に詠まれた歌
次の歌は、藤原敏行の代表歌です。『古今和歌集』の秋歌の巻頭に置かれています。

原文

あきぬと にはさやかに えねども
かぜ おとにぞ おどろかれぬる 『古今和歌集』藤原敏行

現代語訳

秋が来たと目にはっきり見えませんが
風の音ではっと気づかされました。
葛飾北斎による浮世絵
葛飾北斎による木版画
National Diet Library, Public domain, via Wikimedia Commons

江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎による作品『百人一首姥かゑとき』です。住の江は現在は埋め立て地ですが、かつては港でした。向こう岸に見えるのは住吉大社だと思われます。住吉大社神は海から現れたため、海洋安全の神として信仰されています。北斎は住の江のシンボルである住吉大社から連想して港を走る大きな船を描いたのかもしれません。
ちなみに住吉大社は和歌の神としても信仰され、道因法師は京都から毎月徒歩でお参りして、よい歌を詠ませてくださいと願っていたそうです。

歌川国芳の『百人一首之内』
歌川国芳による「百人一首之内 藤原敏行朝臣」
British Museum, Public domain, via Wikimedia Commons

現在は埋め立てられているため、当時の面影はありませんが、住の江(大阪市住吉区)は松の名所でした。

三十六歌仙
藤原敏行は三十六歌仙の1人。
三十六歌仙の一覧ページはこちらをご覧ください。

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