時雨の百人一首

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日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー

Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox

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権中納言匡房ごんちゅうなごんまさふさ

高砂たかさご
さくら
きにけり
外山とやまかすみ
たずもあらな

権中納言匡房
権中納言匡房

THE cherry trees are blossoming On Takasago's height; Oh may no mountain mist arise, No clouds so soft and white, To hide them from our sight.The Assistant Imperial Adviser Masafusa

73番歌
高砂たかさごさくら きにけり
外山とやまかすみ たずもあらな
作者:権中納言匡房ごんちゅうなごんまさふさ(1041年~1111年)
出典:後拾遺和歌集
現代語訳
高い山の尾根に美しい桜が咲いた。人里近くの山の霞よ、どうか立たないでほしい。
解説
『後拾遺和歌集』の詞書に「内のおほいまうち君の家にて、人々酒たうべて歌よみ侍りけるに、はるかに山の桜を望むという心をよめる」とあり、この歌は内大臣・藤原師通の邸宅で酒宴が催されたときに「遙かに山桜を望む」という題で詠まれました。
どんな人?
権中納言匡房こと大江匡房は、赤染衛門のひ孫にあたります。大江家は、学者を輩出する家柄で、匡房自身も幼少期から学問に優れ、16歳で文章得業生になりました。
有職故実ゆうそくこじつに詳しく、後三条天皇白河天皇堀河天皇の教育係を務め、様々な政策を助言するブレーンとして中納言にまで出世しました。
語句・豆知識
高砂
高い山の
尾の上
尾根の桜が
咲き けり
咲いた
完了の助動詞「に」+過去の助動詞「けり」で「~てしまった」又は「~た」と訳します。
外山とやま
人里近い低い山の霞は
たた あら なむ
立たないでほしい
大江匡房の系図
大江匡房の系図 大江千里 赤染衛門 在原業平 在原行平 儀同三司母 皇后定子

の番号が付いている人物をクリックすると、その歌人のページに移動します。

『尊卑分脈』や『大江氏系図』によると、大江氏の祖は平城天皇になっていますが、これは大江氏が自分たちの家系を尊くみせようとしたと言われており、間違いである可能性が指摘されています。

大江音人のときに「大枝」から「大江」に改められました。大きな川(=江)のように末永く繁栄するようにという願いが込められていると言われています。

大江氏は菅原氏と同様に多くの学者を輩出してきた家柄として菅家かんけ(菅原家)、江家ごうけ(大江家)と並び称されています。

匡房の誕生を祝う
赤染衛門の歌
次の歌は『後拾遺和歌集』に収められている 赤染衛門の歌です。
彼女は、匡房の誕生を祝って、産着と一緒にこの歌を贈りました。

原文

くもうえに のぼらむまでも てしがな
つるごろも としふとならば 『後拾遺和歌集』赤染衛門

現代語訳

雲上人になるまであなたの成長を見届けたい。 鶴の羽毛のような白い産着を着ているあなたは、年を経たらきっとそうなるでしょう。

春の到来を詠んだ歌
次の歌は『詞花和歌集』に選ばれている春の到来を詠んだ一首です。志賀の唐崎とは、現在の滋賀県大津市の湖西地域のことです。この地域は、西に800~1,000m級の山々がそびえ、東には琵琶湖が広がる風光明媚な場所です。

原文

こお志賀しが唐崎からさき うちとけて
さざなみよする 春風はるかぜ『詞花和歌集』大江匡房

現代語訳

志賀の唐崎では氷が解け、
さざ波を寄せる春風が吹いている。

葛飾北斎による浮世絵
葛飾北斎による浮世絵
Katsushika Hokusai, CC0, via Wikimedia Commons

江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎による作品『百人一首姥かゑとき』です。百人一首の歌を乳母がわかりやすく絵で説明するという趣旨で制作されたものです。

山の上で桜を楽しむ人々が描かれています。しかし、歌の願いとは裏腹に、霞がかかり、遠くからこの山桜を眺めることはできないようです。

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