日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
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入道前太政大臣
花さそふ
嵐の庭の
雪ならで
ふりゆくものは
わが身なりけり
THIS snow is not from blossoms white Wind-scattered, here and there, That whiten all my garden paths And leave the branches bare; ’Tis age that snows my hair!The Lay-Priest, a Former Prime Minister of State
- 96番歌
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花さそふ
嵐の庭の
雪ならで
ふりゆくものは わが身なりけり
作者:入道前太政大臣(1171年~1244年)
出典:新勅撰和歌集 雑
- 現代語訳
- 桜の花を誘って、散らすように嵐が吹く庭で、花は雪のように降るけれど、古くなるのは我が身であることだ。
- 解説
- 『新勅撰和歌集』の詞書には「落花を詠みはべりける」と記されています。美しい桜が雪のように散りゆく情景を眺めながら、栄華の頂点を極め、すべてを手に入れたとしても、寄る年波には逆らえないと我が身を感慨して歌を詠んだと考えられます。
- どんな人?
- 入道前太政大臣こと西園寺公経は、源頼朝の姪を妻に迎え、鎌倉幕府と深い関係を築いていました。承久の乱では、朝廷側に属しながらも、後鳥羽上皇の反乱計画を密かに鎌倉幕府に報告し、その功績で後に太政大臣にまで昇進した公卿です。京都の北山に豪華な西園寺を建てるなど、栄華を極めた人物でした。
- 語句・豆知識
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- 花 さそふ
- 花を誘う
- 嵐 の 庭 の
- 強風が吹く庭の(花びらは)
- 雪 なら で
- 雪ではなくて
- ふりゆく もの は
- ふりゆくもの(老いてゆくの)は
- わ が 身 なり けり
- わが身なのだなあ
- 西園寺公経の系図・相関図
- 西園寺公経は、源頼朝の妹婿である一条能保の娘を妻に迎え、鎌倉幕府との深い関係を築いていました。しかし、鎌倉幕府打倒を掲げる後鳥羽院からは疎まれ、承久の乱の際には幕府側を支持したため、監禁されることとなりました。幕府が勝利し後堀河天皇が即位すると、公経は内大臣に任じられ、最終的には太政大臣にまで昇進しました。公経の娘である掄子は、関白の藤原道家に嫁ぎ、二人の間に藤原頼経が誕生します。頼経は後に鎌倉幕府の第4代将軍となりました。
- 西園寺
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公経は、京都北山の山荘を改修し、西園寺を建立。
家名を藤原から西園寺に変えました。西園寺の家名は、公経がこのお寺を建て、西園寺殿と称せられたことに由来しています。地図へのリンク - 金閣寺
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金閣寺(鹿苑寺)は、もともと藤原公経の別荘として建てられていました。その後、公経の子孫である西園寺実永が、この別荘を室町幕府第3代将軍・足利義満に譲り、義満が金閣寺として改築しました。地図へのリンク
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