日本語音声:NHKクリエイティブ・ライブラリー
Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox
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良暹法師
さびしさに
宿を立ち出でて
ながむれば
いづくも同じ
秋の夕暮
THE prospect from my cottage shows No other hut in sight; The solitude depresses me, Like deepening twilight On a chill autumn night.The Priest Riyo-zen
- 70番歌
- さびしさに
宿を立ち出でて
ながむれば
いづくも同じ 秋の夕暮
作者:良暹法師(生没年不詳)
出典:後拾遺和歌集 秋
- 現代語訳
- 寂しさに耐えかねて庵から出てみたけれど、どこも同じように寂しい秋の夕暮れであることよ。
- 解説
-
『後拾遺和歌集』の詞書は題知らずとなっていますが、
『詞花和歌集』の詞書に「大原にすみはじめけること」とあり、この歌は、比叡山の僧侶だった良暹法師が、京都の大原で隠棲し始めたときに詠まれたとされています。大原は自然が多く、人は少ない場所です。人寂しくなって、庵を飛び出したのに、寂寥とした秋の夕暮れに風情を感じたという心情の変化が詠まれています。この歌以降「秋の夕暮れ」を結句とする歌が流行しました。
- どんな人?
- 良暹法師は、比叡山延暦寺の僧侶となり祇園社(現在の八坂神社)の別当を務めた後、大原の里に人知れず暮らしたといわれています。
- 語句・豆知識
-
- さびしさ に
- 寂しいので
- 宿 を 立ち出で て
- 家を出て
- ながむれ ば
- 物思いにふけりながらじっと眺めれば
- いづく も 同じ
- どこも同じ
- 秋 の 夕暮れ
- 秋の夕暮れ
- 三夕の歌(さんせきのうた)
- 新古今和歌集に収められている「秋の夕暮れ」で終わる次の3首が「三夕の歌」として称えられています。
寂連
原文
さびしさは その色としも なかりけり
まき立つ山の 秋の夕暮れ 『新古今和歌集』寂連現代語訳
寂しさを感じさせるのは、必ずしもその色(紅葉の色)であるわけではないのだなあ。槙が立つ山の(無彩色の)秋の夕暮れに寂しさを感じる。
西行
原文
心なき 身にもあはれは 知られけり
鴨立つ沢の 秋の夕暮れ 『新古今和歌集』西行現代語訳
出家して情緒を理解する心を捨てた私なのに、 鴫が飛び立った沢の後に訪れる秋の夕暮れの静寂にしみじみと心を動かされることよ。
藤原定家
原文
見渡せば 花も紅葉もなかりけり
浦の苫屋の 秋の夕暮れ 『新古今和歌集』藤原定家現代語訳
見渡せば花も紅葉も見あたらない。 苫ぶきの粗末な小屋があるだけの海辺の秋の夕暮だけが目に映る。
- 歌川国芳の『百人一首之内』
-
江戸時代の浮世絵師・歌川国芳による浮世絵です。
百人一首の和歌に合わせた情景が描かれています。
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