柿本人麻呂(3番) | ほのぼのと 明石の浦の 朝霧に 島がくれゆく 舟をしぞ思ふ |
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紀貫之(35番) | 桜散る 木の下風は 寒からで 空に知られぬ 雪ぞ降りける |
凡河内躬恒(29番) | いつくとも 春の光は わかなくに まだみ吉野の 山は雪ふる |
伊勢(19番) | 三輪の山 いかに待ち見む 年ふとも 尋ぬる人も あらじと思へば |
大伴家持(6番) | 春の野に あさる雉子の 妻こひに おのがありかを そこと知れつつ |
山部赤人(4番) | 和歌の浦に 潮満ちくれば かたを波 葦べをさして 田鶴鳴き渡る |
在原業平(17番) | 世の中に たえてさくらの なかりせば 春のこころは のどけからまし |
僧正遍昭(12番) | たらちねは かかれとて しもぬば玉の 我が黒髪は なですやありけむ |
素性法師(21番) | 見渡せば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の にしきなりける |
紀友則(33番) | 夕ざれば さほの河原の 川霧に 友まよはせる 千鳥鳴くなり |
猿丸大夫(5番) | をちこちの たづきもしらぬ 山中に おぼつかなくも 呼子鳥かな |
小野小町(9番) | わびぬれば 身を浮草の 根を絶えて 誘ふ水あらば いなむとぞ思ふ |
藤原兼輔(27番) | 短か夜の 更けゆくままに 高砂の 峰の松風 吹くかとぞ聞く |
藤原朝忠(44番) | 逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし |
藤原敦忠(43番) | 伊勢の海 ちひろの浜に ひろふとも ここそ何てふ かひかあるべき |
藤原高光 | かくばかり へがたく見ゆる 世の中に うらやましくも すめる月かな |
源公忠 | ゆきやらで 山路くらしつ 郭公 いま一こゑの きかまほしさに |
壬生忠岑(30番) | 子の日する 野辺に小松の なかりせば 千代のためしに 何をひかまし |
斎宮女御 | 琴の音に みねの松風 かよふらし いづれのをより しらべそめけむ |
大中臣頼基 | ひとふしに 千代をこめたる 杖なれば つくともつきじ 君がよはひは |
藤原敏行(18番) | 秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる |
源重之(48番) | 風をいたみ いはうつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふころかな |
源宗于朝臣(28番) | ときはなる 松のみどりも 春くれば いまひとしほの 色まさりけり |
源信明 | 恋しさは おなじ心に あらずとも 今よひの月を 君みざらめや |
藤原清正 | 天つ風 ふけゐの浦に すむたづの などか雲井に 帰らざるべき |
源順 | 水のおも にてる月なみを 数ふれば 今宵ぞ秋の もなかなりける |
藤原興風(34番) | たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松もむかしの 友ならなくに |
清原元輔(42番) | 秋の野は はぎのにしきを ふるさとに 鹿の音ながら うつしてしかな |
坂上是則(31番) | みよし野の 山のしら雪 つもるらし ふる里寒く なりまさるなり |
藤原元真 | 咲きにけり 我が山里の 卯の花は 垣根にきえぬ 雪と見るまで |
小大君(東宮左近) | 岩はしの 夜のちぎりも たえぬべし 明くるわひしき かつらぎの神 |
藤原仲文 | 有明の 月の光りを まつほどに 我夜のいたく 更けにけるかな |
大中臣能宣(49番) | 千年まで かぎれる松も けふよりは 君がひかれて よろづ代やへむ |
壬生忠見(41番) | やかずとも 草は萌えなむ 春日野は ただ春の日に 任せたらなむ |
平兼盛(40番) | くれてゆく 秋のかたみに おくものは わがもとゆひの 霜にぞありける |
中務 | 秋風の 吹くにつけても とはぬかな 荻の葉ならば 音はしてまし |